「さむっ…今は夏なのになぁ…」
蒼空は夏服の格好をしている。

流石に私も寒い。

「そうだね、でも夜はいつも寒くない?」
冬の夜なんか冬眠したくなるぐらい…。

「蒸しっとした日もあるぞ。それに夜というか夕方に近いな」
本当だ…。夕日が微かに消えていくのが見える。

「…ってか5時間もいたのか」

「楽しすぎてあっという間だったな」
本当にあっという間だった…。
まだ一緒にいたいもん。

「…うん」
でも私といて楽しいとか、ちょっと嬉しっ



「それより早く帰らなくていいのか?まだ明るいっていってもすぐ暗くなるぞ?」
蒼空が心配してくれる。


「大丈夫だよ。私の家まで20分ぐらいで着くし」

「それでも早く帰らないと親が心配とかしないのか?」

親か……。


「……私、両親がいないんだ…いや、実際にいるんだけど…捨てられたんだ」

気がつくと私は蒼空に話していた。
一番、この事を話したくない人に…
自分の過去を…

「わ、悪い…そんなつもりじゃ…嫌なこと思い出させちゃったな…」

こんなことで蒼空と気まずくなりたくないのに……
心配もかけたくないのに……

「あっ、ううん、蒼空は悪くないよ」

でも助けて欲しかったのかもしれない。
蒼空ならって…
自分の事なのに…

「……俺も親父がいないんだ…母親はいるけど外国に出張してる、というか外国で働いてる」

それはもう知ってるよ…
ずっと前から…

だって私達は…___________

「そうなんだ…でもどうして?」
ゴメンね、蒼空。
まだ隠してないといけないんだ。

やっと出会えたんだから…

「ん?これでお互いにだろ?まぁ俺の方が少ないかもだけど…」

えっ…
何気なく言う蒼空の言葉に驚いた。
たった今、考えてたことが全て真っ白になって消えていく。

蒼空、あの時もそうやって私を励ましてくれたよね…。

ありがとう。


涙を必死に堪え、精一杯の笑顔をみせる。

「よかった、笑顔に戻った」

「あっ…」
頭…蒼空の手が…
せっかく頑張って涙、抑えてるのに…
バカ…

「あー、勝手に頭、撫でて嫌…だったか…?」

「いや、違うのっ!…そうじゃなくて…ただ嬉しくて…」

もう、本当、蒼空には敵わないな、

今は、私のこと覚えてないはずなのに…
何でいっつもそうやって優しいんだろ。

「そ、そうか」

「えっと、ありがとね」


「俺は何もしてないよっと、じゃあ歩くか送ってくよ」

全く…
何もしてないわけないじゃない。
しれっと私を励まして。