このチーズ・ケーキを
作ることができなくて

ハックは悩んだ。
幾晩も、幾晩も。

卵の量を工夫した。
小麦粉の配合も変えた。

泡立て器のかえし方から
砂糖の分量、型の大きさ
あれこれあれこれ工夫したけど
どうやったってうまくできない。


その一方でハックは

七種のベリーのマカロンや

東酔幻茶という
幻の紅茶のシフォンケーキ

オレンジカスタードが
あふれる
サクサクのミルフィーユに

テノール歌手のように重厚な
カカオの風味豊かな
オペラ・ケーキ。

誰も見たことのない
スイーツを次々つくりだしていった。


チーズ・ケーキができずとも
親方から怒られようとも
ケーキへの情熱を
失わないハック。

そんなハックに親方は
「しょうがねぇな」と言いながら

心の中では
「あんないんちきチーズ・ケーキ、できなくてもいいんだぞ」ってつぶやいていたのさ。