元彼は私より身長が低かったから傘は私がさしてあげた。
何も話さずにお互いだまっていた。

こんなときに元彼のことを思い出すなんて…
私はハンカチで制服を拭いていた。
あまり思い出したくない。

「バス来た…」

「え…?」

向こうから微かにバスが来るのが見えた。

「あ、あの…ありがとうございました。」

「うん…別に…」

彼は傘を閉じ、バスに乗り込んだ。
私もつられて彼の後ろの席に乗った。

こうやって傘に入れてくれた彼の優しさが嘘だったらどうなんだろ。
そんなことはないかな。
いや、わからない…

彼は坊主だから野球部かバスケ部だろう…

バスケ…いや、バスケ部はないな。
野球部だろう。
たしか、私の高校は野球が強かったような…

てか、なんでさっきから彼のことばかり考えているのだろう…
別に私は彼にとっては他人だ。
関係ない…

でも、彼の後姿は細いが、がっちりしててたくましかった。