翌日の午後、青木湖湖岸の駐車場に清二と
春子が乗った高級乗用車が止まっていた。

車は泥だらけで汚れている。今日は清二が
運転席、春子は助手席でタバコを吸っている。
清二が思案顔で語りかける、

「どうやって兄貴を殺やるかだ」
「事故に見せかけることよ」
「事故?」

「そう、たとえば眠り薬とか青酸カリとか
飲ませた後で車ごと湖の底に沈めるのよ」
「なるほど」

「もし車が発見されても、死体は腐ってて
毒殺とは分かりゃしないさ。事故。夜スピードを
あげすぎてカーブを曲がりきれずに湖にがけから

ざんぶとダイビング。あるいは、目の錯覚で
柵を乗り越え湖へ、なんとでもなる」

「よし、それでいこう」
「本気まじ?」
「ああ、もちろん。今までの苦難の人生に決着を
つけるんじゃ」

春子は黙って次のタバコに火をつけた。