「どうもありがとう、おばさん。勉強、勉強で
村のことを一番知らないのは、間違いなく

この私です。小百合さんの言うことをよく聞いて
行って来ますから安心してください」

「はい、じゃあ気をつけて」
「夕方6時には戻ります」
玄関から亜紀の叫ぶ声が聞こえる。

「パパー、まだ?早く行こうよ」
「あー、今行く!」
小百合と亜紀の笑い声が聞こえる。

三人が出発した後ヨネとヨシは一緒にテレビを見ながら
お茶を飲みお菓子を頬張っていた。ヨネがしみじみと、

「あの3人がずっとここの家族でいてくれると、
わしゃほんとに心安らかなんじゃがのう」
ヨシはせんべいをかじりながら、

「そん時ゃ、下女とばあやで住み込ませてもらおう
かいの、なー姉さん!」

「下女とばあやか。小百合が下女と言う事はなかろう。
お前がばあやはわかるがの」

「ほならお手伝いさんか?それでも十分じゃ」
「なんのなんの、嫁でもええのとちがうか?」

「それじゃあ姉さん、あんまりもったいないだで。
第一二人ともその気が全然ねえだよ。

そろってバツ一やしのう。わしらがどんなに
やきもきしても、そりゃかなわんでよ」

「そりゃ、そうじゃ。ワッハッハッハ」
ヨネは久しぶりに腹の底から大笑いをした。

「医者が喘息はストレスからじゃと言うとった。
発作を起こさんためにも何とか亜紀に気に入って
もろうて、ここに越してきて欲しいんじゃが」

「清一さんがそういうとんなさったか?」
「ああ、仕事はパソコンとかで何とかなる言うてな。
学校のこともあるが、亜紀次第やと言うとった」

「そうかー、亜紀ちゃん次第かー」
「そうや。あの亜紀ちゃん次第や」
明るい希望に二人は顔を見合わせて微笑んだ。