清一には5才年下の弟清二がいる。
共に白馬台高校の出身ではあるが、
清一が優等生だったのに比して

清二はひねくれものの悪だった。
それには原因があった。幼い頃から
利発だった長男清一を、ヨネは

心底愛し英才教育を施し、塩山家の跡取
り息子として多大の期待をかけてきた。
逆に清二には塩山家の面汚しとして

人目もはばからず虐待した。
清二は中学校に上がると益々非行に走り
ヨネの手に負えなくなっていった。

清一は母の過度の期待と弟の存在とにいたた
まれなくなり、東京の大学に入学と同時に何
かと理由をつけては故郷に帰らなくなった。

卒業後東京の出版社に就職してからはなお
さらだ。30歳で家族には内緒で結婚した。

亜紀が生まれて5年後に病弱の妻が死んだ。それ
からの5年間は父と娘の生活がずっと続いていた。

清二は高校を中退して隣村の堀金観光開発の
作業員としてバイトを始めた。社長の堀金留吉
が塩山家の次男と知って、それとなく手なずけ

ていったのだ。数年後清二は堀金の娘春子と
駆け落ちをする。二人は数年東京あたりで同棲
した後、神城に戻って堀金の許可の下所帯を持った。