駐車場に軽自動車が止まって、見るからに
人のよさそうなヨシおばさんが、手に一杯
のビニール袋を提げて下りてきた。

小百合と亜紀が駆け寄る。清一も近寄る。
「小百合、まだ助手席にもあるよ。
あら、清一ちゃんお帰り!」

「ああ、おばさん。買い物いつもすみません」
「なんのなんの。やあ、亜紀ちゃんも
おおきゅうなって!」

亜紀もビニール袋を両手に持って、
「こんにちわ!」
「こんにちわ!いくつになったの?」
「9才!小学三年生!」

「もう9才!どう?亜紀ちゃんは田舎好き?」
「だあいすき!」
「ハッハッハ。そうかね。」

ヨシは田舎大好きに感動して破顔笑顔になった。
小百合と亜紀がビニール袋を持って先に行く。
後からゆっくりと清一とヨシ歩きながら、

「一ヶ月前に姉さんが喘息の発作で死に掛けてナ」
「ああ、今お袋から聞きました。おばさんに
命を助けられたとほんとに感謝していました」

「どうしても清二夫婦には見てもらいとうない
と言うてなあ」
「お袋は頑固だから」

「ああ、頑固頑固。こりゃ逆らえんと腹を決めて
小百合と越してきたんじゃ」
「清二は?」

「清二は前より益々悪うなっとる。ここにあった親父
さんの高級乗用車も持っていったきり。むこうの
親父が極道だで、清二もそれに染まってきとる」

「ふーん」
「気をつけんと何されるか分からんよ、あの連中!」
「あの連中」

お袋と同じことを言うと思い、清一は顔をしかめた。