記憶上書き屋

近藤さんは深くため息をつき目を閉じた。

まるで祈りを捧げるように。


「信じてもらえるかどうか、それはあなた次第。過去は変えられる。他人になれるのよ。戸籍だとか家族、それすら変えられる」

変えられる。私の運命が変わる?

本当なのだろうか。私は13歳から26歳までずっと嫌な思いばかりしてきたのだ。この持続のような苦しみが終わるのだろうか?


「本当よ。あなたがおかしくなるくらい。笑っちゃうくらいにね」

近藤さんは片目をつぶってにっこりと笑った。


「誰にだって消してしまい過去ってあるのよ。私にも……あったわ。でもそう消えてしまったけれどね」


私はカタログのような色鮮やかなパンフレットをもらってそこに記入してある記憶を消すための費用や少し日数がかかることなど説明を受けた。