扉を開けると次は明るい部屋に入った。
田中さんは僕はここにいるからと言って私だけが招かれた。
女性は優雅な動きをしているがやはり慣れた感じがして看護師さんの動きのような医師のような安心感と圧倒的な存在感があった。
「ここは記憶を上書きするところなの。聞いていると思うけど。生きている上で本人の意思じゃあどうしようもないことってあるでしょう?いくら偽ってもごまかせない。それは事実だもの」
私はかああと顔が赤くなりそして血の気が引くような寒さを覚えた。
どうしようもない事実。
何度転校しても苗字すら変えても変わりなく私につきまとう。
友達だって出来ない。恋人なんて……。
「でもね、世の中その人にとってはすごく耐えがたい出来事でもある人にとってはどうでもいい記憶ってあるのよ。たとえば…レイプされてそれを苦に自殺をする人。ホストに貢ぐだけ貢いでも相手にされず借金まみれになって外国へ逃げ出した人。ここへ記憶を売りに来る人も多いの」
記憶が変えられる?私の記憶も別の人の記憶と変えることが出来るのだろうか。
「たとえば、成績優秀で美人。部活ではバレーボール部に所属してここでも花形スター。そんな彼女が自殺するって考えられる?」
「さあ…。でも悩みって本人だけのものでもないですし」
「そうなの。家に帰れば彼女にとって地獄だったの。彼女の母親が再婚した相手に13歳の時にレイプされた。美しい可憐な少女にとって耐えがたい事実。そして母親が交通事故で死んでしまいその保険金が手に入った。それは娘の名義の保険だったわけ。父親はお金欲しさに彼女を四六時中見張りつづけ、犯し続けた」
「逃げたくてもたった16歳の女の子一人でどうやって生きていくのか誰か教えてくれたらいいのにね。相談に乗ってくれる人もいたと思うの。でもね彼女はプライドがとても高かった。常にエリート。クラスメートが彼氏とキスしたとか今度泊りに行くのだとか聞くだけで辛かった」
重い空気が部屋中に流れ始めた。この部屋はカモミールの優しい香りがするのになぜか話を聞くにつれ血なまぐさくわが事のように辛い気持ちになっていった。
カモミールの香りは懐かしい思い出の香りだ。まだ何も事件が起きなかった時の家族の香り。懐かしくても手に入らない手を伸ばしても届かない思い出の香り。
田中さんは僕はここにいるからと言って私だけが招かれた。
女性は優雅な動きをしているがやはり慣れた感じがして看護師さんの動きのような医師のような安心感と圧倒的な存在感があった。
「ここは記憶を上書きするところなの。聞いていると思うけど。生きている上で本人の意思じゃあどうしようもないことってあるでしょう?いくら偽ってもごまかせない。それは事実だもの」
私はかああと顔が赤くなりそして血の気が引くような寒さを覚えた。
どうしようもない事実。
何度転校しても苗字すら変えても変わりなく私につきまとう。
友達だって出来ない。恋人なんて……。
「でもね、世の中その人にとってはすごく耐えがたい出来事でもある人にとってはどうでもいい記憶ってあるのよ。たとえば…レイプされてそれを苦に自殺をする人。ホストに貢ぐだけ貢いでも相手にされず借金まみれになって外国へ逃げ出した人。ここへ記憶を売りに来る人も多いの」
記憶が変えられる?私の記憶も別の人の記憶と変えることが出来るのだろうか。
「たとえば、成績優秀で美人。部活ではバレーボール部に所属してここでも花形スター。そんな彼女が自殺するって考えられる?」
「さあ…。でも悩みって本人だけのものでもないですし」
「そうなの。家に帰れば彼女にとって地獄だったの。彼女の母親が再婚した相手に13歳の時にレイプされた。美しい可憐な少女にとって耐えがたい事実。そして母親が交通事故で死んでしまいその保険金が手に入った。それは娘の名義の保険だったわけ。父親はお金欲しさに彼女を四六時中見張りつづけ、犯し続けた」
「逃げたくてもたった16歳の女の子一人でどうやって生きていくのか誰か教えてくれたらいいのにね。相談に乗ってくれる人もいたと思うの。でもね彼女はプライドがとても高かった。常にエリート。クラスメートが彼氏とキスしたとか今度泊りに行くのだとか聞くだけで辛かった」
重い空気が部屋中に流れ始めた。この部屋はカモミールの優しい香りがするのになぜか話を聞くにつれ血なまぐさくわが事のように辛い気持ちになっていった。
カモミールの香りは懐かしい思い出の香りだ。まだ何も事件が起きなかった時の家族の香り。懐かしくても手に入らない手を伸ばしても届かない思い出の香り。
