勤め先も何度も変えた。

なぜか執拗に追いかけてくる。嫌がらせの電話やファックスが会社に流れる。

ここも半年だな。

「高橋さん、もう上がり?飯でもどう?」
田中圭介は会社で営業をしている。いつも外回りが多いせいか日に焼けて健康そうだ。CMに出てくるタレントのように白い歯が光って見える。

「私なんか。さ、誘わなくていいです。あの…」
田中さんは女の子たちに人気もあるし営業成績もよく印象がとてもよかった。今の一言で振り向いた子が何人いただろう。

「何言ってるの。俺ら同じ高校の出身なんだよ?知ってた?」
「!!!!」
私は震えた。田中さんは知っているのだ。知っていて声をかけてきたということになるのだ。

「田中さん、からかうのは止めてください」
振り切るように逃げる私の腕をつかんで
「逃げることなんてないんだよ。話がしたい。大切な話なんだよ。きっと高橋さんも興味を持つはずだよ」

これから逃げなくてもよくなる。

耳元でそうささやかれて一層ドキっとした。自分でも顔から血の気が引いていくのがわかる。


何?どうしてそんなことを言うのだろう?

信じるということが出来るのだろうか。今までどれだけ辛い思いをしてきたことか。想像ができるのだろうか。

「信じて」