記憶上書き屋

「高橋さん、気が早いな。もう決めたの」

これが決めなくてどうして勧めたのだろう?呆れるくらい私は愉快になって笑ってしまった。お金ならある。だって使い道がほとんどなかった。時間だって今の会社ももう長くはないのだろうからたくさんある。

「田中さん、ほんと~にありがとう。生まれ変われるんだよ、私」

あ、田中さん知ってるんだよね。教えてくれたんだもの。

「俺の事忘れないでほしいな。そういうオプションもあると思うから選んでおいて。悪くは思っていないでしょ?」

「うん。全く見ず知らずの人ばかりになったらどうなるんだろうって不安あった。田中さんの事、忘れないよ」

私達は抱き合ってキスをした。


田中さんの部屋に招かれていった。


「え。田中さんってすごい金持ちなの?」


あの会社でこれだけのマンションには住めないだろう。
そう思うほどのセキュリティーに豪華かどうかわからないけれど深くつやのある整った家具。

「環境が変わったからね」


「君にも変化があるはずさ」