お風呂から上がった後、湯船のお湯があっという間に減ったね、とじゅんさんに言うとじゅんさんは、湯船じゃなくて浴槽だろ、と笑いながら私の頭を小突いた。

 あれ?湯船じゃないの?私ずっと、湯船だと思ってた。

 お風呂でふやけた体をタオルで拭きながらそう言うと、普通は浴槽だろ?と言われた。

 言葉って難しい。

 髪の毛をガシガシとじゅんさんに拭かれながら、そんな事を思ってみる。何処となく哲学者の気分…なんつて。
 くくくっと思わず笑うと、いきなり温風が顔に襲いかかる。

「ぎゃっ」
「何、くくくって」

 ドライヤーを私の顔から髪の毛に戻しながら、じゅんさんは私に問い掛けてくる。私は恥ずかしいから何も言わなかった。

 じゅんさんに今。好きと言って。
 これ以上の言葉が見つからなくって。愛しいと、愛してると言いたいけど。

 でもじゅんさんに今言いたいのは、好きって言葉で。でも愛してるの方が好きは深い気がして。
 でも今の気分は好きって言いたいの。だから言葉って難しいと思って。

 そう、言えば、じゅんさんは必ず私を馬鹿にするだろうから。
 
 だから私は何も言ってなんかやらない。何も知らない振りをして、ニッコリと笑って。

 好き

 て、言う…予定。近々、多分。



おしまい。