そっと、じゅんさんの背中に腕を回して、随分溜まってきているお湯を背中に掛けてあげる。背中だけでなく、髪の毛も、全てに。

 私は何も言わない。

 言えなかった。私を抱き締める腕が、いつものじゅんさんじゃないようで。何も、言えなかった。

 じゅんさんは何も言わないまま、私の体を抱き締める。お湯はとうとう胸の辺りまで浸かった。慌ててコックを捻る。キュッキュっと、音が決してお世辞にも広いと言えない浴室に広がった。

 チャプン、と音を鳴らしながらじゅんさんは私の体をゆっくりと離す。

 私の両頬に手を添える事は忘れずに。そうして少し間を置いた後、また唇を重ねる。

 頬についた髪の毛を指先で払われ、じゅんさんの両手は私の耳を塞ぐように移動していた。はっ、と軽く息を漏らし、唇を離すとじゅんさんの強い瞳に見つめられる。私はじゅんさんの瞳を見つめながら、同じ様にじゅんさんの両頬に手を回して、耳に髪を掛ける様に手を動かす。

 目を少し、反らす。
 じゅんさんの瞳は、すごく魅力的すぎて。
 すごく強すぎて。
 すごく、ヤバい。
 
 好き、という気持ちは唐突にやってきて、それはじゅんさんと私を襲うのだった。



おしまい。