[side 多軌柊斗]

あいつの目を引こうと頑張った。

だけどあいつには日向しかいなくて。

せっかく仲良くなってチャンスがきたのに、日向が戻ってきて。

(しかも彼女つきで…)

俺は納得いかなくて日向に言った。

「何で沢本と付き合ってんの?お前、本当は…」

「夕日には両親もいないんだ。そのつらさは俺がよく知っている」

沢本は幼い頃に両親を亡くしている。

だからって

「だからってなつが、傷付いても飯野かよ?!」

「…"なつ"?」

「喜瀬夏輝。お前がそんなんじゃ俺もらうぞ」

「…────勝手にしろ。俺には夕日がいる」

────バンッ

「はぁ…だったらあんな顔するなよな」

日向が最後に見せた顔は切なさと怒りが入り交じっていた。

「みえみえだっつの」

お前がなつのこと好きってのはさ。

俺は赤く染まった空を見上げて呟いた。

「俺は、なつを傷付けない」