小走りで、私のいる2階へとやってきた登稀先輩からは、きめ細かな輝く汗が空気を舞っている。
さっきまで上から見下ろしていた先輩の顔は、もう私の目の前にあった。
滴る汗を、左手でシャツの襟部分を掴んで拭く姿は、どことなく色っぽい。
「ん、ほら」
その仕草をしながら、右手をパーにして私のカメラを求めた。
「いやあ…あの、そのですね」
逃げ場がなくなった事で、私はしどろもどろ言葉を探す。
そんな私の様子を見て先輩は、
「…撮ってなかった、だろ?」
まるで最初からわかっていたような言い方で、言った。
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