俺は、その桜の木にゆっくりゆっくり近づいた。


あと5mくらいの距離まで近づいたとき

木を目の前にして、カメラを構えている男の人がいることに気が付いた。


ネクタイの色は黄色、3年だった。




最初は、何やってるんだと思った。


けれど、レンズを覗くその人の目は、何かを貫くような恐ろしいほど真っ直ぐな視線で。



その真剣な瞳を見て、俺の足がピタリと止まった。

動かなくなってしまった。