あれから、どれくらいの時間が経ったんだろう。


隣にいる安心感に浸りすぎて、無心で歩いていたようだ。


ケータイを開いて時間を確認しようとしたとき


「マナちゃん、大丈夫?疲れた?」


顔を覗き込むようにして立ち止まってくれる。


その額(ひたい)には汗が少し滲んでいた。


「‥‥‥少し」


「じゃあ、その辺のカフェで涼んでいこう」


いつもの笑顔とは少し違う‥‥そう思った


だけど、怪しいとかそういうのじゃなくて、なんかこう『嬉しさ』が混じったような笑みだった。


だから、いつもみたいに「大丈夫、行こう」


そう言わなくてよかったと、心底思った。