ただ、手の感触と温度だけは覚えてた。


掌を見ながら、ただ何もせずに立ち尽くしてた。


寂しくて、切なくて、怖くて


無だったのに、心だけは忙しなくいろんな感情がぐるぐる回る。


そんな、何もない世界に小さな声が聞こえた。


『大っ嫌いだ』


白から一遍、辺りは急に色を失くし真っ暗な世界へ変わった。


「う、うあぁぁ‥‥あぁぁああああ!」


飛び退いて起きた世界は、俺のよく知った世界。


「はぁっ‥‥はっ‥‥」


夢‥‥‥夢か


おでこに手を当てながら、乱れた息を整えた。