あたしは、ゆっくり回れ右をして自室に戻った。


そして、毛布を取り出して静かに階段を下りる。


まだ寝息を立てままのナオにゆっくり毛布を掛ける。


あたしの女装はといてあった。


「ナオ‥‥また喧嘩したの?」


ふわふわの髪の毛の間から見える握られた拳には傷痕がいくつもあった。


赤く腫れた手。


唇の端には切れた後もある。


また、傷ついたんだね‥‥


半分はあたしのせい‥‥


あたしは棚からバンソーコーと塗り薬を取り出して、ナオの傍に置いた。


いつもだったらあたしが塗ってあげるけど、今は塗れないことがすごく寂しく感じる。