マナが走り去った後、俺はしばらくそこに立ち尽くしてた。


そして、頭の中でマナが言った言葉を何度もリピートしていた。


『"ナオ"なんか大っ嫌い』


『お兄ちゃん』じゃなくて、あの時マナは『ナオ』と呼んだ。


いつもは名前を呼ばれて嬉しいのに、今日は傷ついた。


お兄ちゃんと呼ばれたなら、"兄"のせいにして俺は自分を守れた。


だけど、ナオと呼ばれたら‥‥誰のせいにもできねぇじゃねぇか


呆然と立ち尽くす俺に、低いバイクのエンジン音が聞こえた。


「なにしてんですか。総長」


「‥‥俺は、間違ってたのか‥‥?」


「総長として‥‥でしたら間違ってはないと思います。だけど、兄として‥‥なら、わかりかねます」


ハルの答えに、俺も頷いた。