ニヤリと不敵に笑うカナタ。


「引っ掛かってんじねーよ。マヌケ」


「え、だって、カナタが思い浮かべろなんていうからっ!」


「だーかーら!それはお前にキスするための口実に決まってんだろ、気づけよバカ」


最後の『バカ』の部分は少し拗ねたような口調。


改まって、キスって言われると意識して唇に全神経が注がれる。


徐々に熱を帯びていく頬と、さっきの感触を思い出してしまう唇。


指で唇をなぞって小さく息をつく。


そういえば、ナオがあたしの周りをうろちょろしてたから彼氏がいたことはない。


じゃあ、今のが‥‥


「ファーストキス‥‥?」


唇も動かないほど、小さな声でそう呟いた。