「もういい。叶愛、行こう?」
「ちょ、待て!」
「しつこいよ、おじさん?」
力が抜けて空汰君に引っ張られるしかない私は何も話せずに下を向く。
「あ、分かった! 叶愛、今日は俺らが付き合った記念の日だろう?」
「…違うよ」
「じゃああれだ、俺の家に引っ越して来た日!」
「違う…」
こんなに焦って話す大和…初めて。
怖いくらいに取りみだしてる。
「じゃあ…」
「ふざけんなよ!!」
私を掴んでいた手がほどけると同時にバキッと嫌な音がする。
「く、空汰君!?」
「大事にせずに済ましてやろうとしてんのに、叶愛をこれ以上傷つけんな!!」
大和の胸倉を掴んで、怒っている空汰君にはいつもの面影がない。
大和と一緒にいた女の人が走って逃げていく。

