私がそう言うと野山君は真剣な表情になった。





「自分の家まで彼好みに合わせる必要ないんじゃない?」

「自分の家って言うか、彼の家。同棲してるの」

「…へぇ。毎日帰ってくるの遅いでしょ」





 何かを見抜いてるようにいつもより低い声でそう言った野山君。






「うん」

「無理することないよ」

「え?」

「そんな両親とも離れて彼が家にいなきゃ寂しいでしょ」





 なんで知ってるんだろう。





 …ふっ、と笑った野山君は私の頭を撫でる。





「ねぇ、泣いていいよ」

「えと…」

「辛いこと、あったんでしょ?」

「ホント…なんで知ってるの…」

「わかんない」





 勝手に溢れてくる涙を流させてくれた。





 優しい優しい野山君に出逢った。