面会時間ギリギリまで話した私たちは、あの話には一切触れなかった。
「あ。叶愛、最後に…」
「何?」
「愛してた。…アイツに幸せにしてもらえよ」
そう言った大和はドアの奥に消えて行った。
ほら、理由なんて分からないけど。
私の心が大和は悪い人じゃないって言ってる。
「うん」
誰もいない向こうに向かって返事をする。
帰り道は思ったより暗くて、寒くて…寂しかった。
信号待ちをしているところで後ろから現れた人物に手を繋がれた。
「おかえり」
「あ」
寒そうに首までマフラーを巻いた空汰君は優しく私の手を包み、自分のコートのポケットに突っ込んだ。