「つかお前、手洗え」
「え? あー…忘れてた」
手のひらは今でも思い出すと胸が苦しくなるくらいの血が付いている。
「わ、空汰君! ごめんね?」
「…平気だよ。……本当に叶愛が戻ってきてくれて良かった…」
手のひらをじっと見つめながらつぶやく。
俺は叶愛がいないと生きていけないんだよ。
情けない男なんだ。
「心配、かけた…?」
「あ、当り前でしょ!!! 俺、震え止まらなかったんだから…」
制服の裾を血がついた手で握り締める。
そんな俺を見て小さく笑った叶愛は「ごめんね」と言う。
「謝るなら、もうどこにも行かないで…俺から離れないでね?」
「どこにも行かないよ」
ふわりと笑う叶愛を見て、本当に天使じゃないかと思った。

