「知らなくていいわ」




 彼女はそう言うと、持ってきた黒い袋を私の方に思いっきり投げた。






「おいっ」






 見事に私の顔に命中した黒い袋の中からは数匹のゴキブリが出てきた。






「…ゴゴゴ…ゴキブリィィィ!!!」

「と、叶愛落ち着いて!」





 ただ叫んで逃げ回って空汰君に飛びついた。





「地味な嫌がらせだな、頭悪いの?」




 飛びついた私を抱き寄せながら低い声で言う。







「こ、これに懲りたら凍弥君には近づかないで!」

「あのなぁ、何を勘違いしてるか知らないけど。俺と叶愛は付き合ってないし、叶愛と遠矢は姉弟だし」