もう渡してしまったものは仕方ないけど。
叶愛を見ると、普通に着てるし。
たぶん大丈夫ってことで。
ちらっと後輩を見ると、何だか複雑そうな顔をして下を向いていた。
「うし、練習再開するぞー!」
俺の声で部員たちがボールを持って、練習を再開し始める。
部活が終わるころには、もう暗くなりかけてる。
「お疲れさま―」
「おー、お疲れー」
俺は部員たちの流れに沿って、部室に向かう。
「おい、こらこらこらー…、野山。どこ行くんだ」
「…ですよねー」
私服だし、着替える必要もなければ部室に用もない。
「逃げようとしたな?」
「はい」