帰宅しようとする生徒たちの波をかき分けて
階段を駆け降り、玄関を飛び出す。
新入生勧誘の列から少し外れたところに、さっきの二人組は立っていた。
「あの…」
「あぁ、あんたたちか」
近付いて声をかけると、連れの人の方が顔を上げた。
──やべ、三年の組章だ。
「すみません」
「新入生?気をつけなよ」
長い黒髪を、後ろでポニーテールにしている。
背が高く、スラリとした体型で
いかにも勝ち気そうなその人は、俺たちを軽く睨み付けた。
「……」
で、肝心のぶつけちまった人の方は
どういう訳か、俺の学生証をジッと見つめたまま動かない。
