スミダハイツ~隣人恋愛録~

ジェットコースターに乗っているみたいだった。

何が面白いのかもわからないくらい、酔っ払って笑う麻子。



「あ、糸くず発見ー。いっつもついてるよねぇ。でもぉ、これはぁ、榊くんが仕事頑張ってる証拠だもんねぇ」

「ガキか。離れろよ」

「んー。やだぁ」


榊の、煙草の混じる匂いが、ひどく心地よくて。

このまま眠ってしまいたいと思う。



「離れろっつーの。お前、俺が男だってこと忘れてないか?」

「忘れてないよぉ。榊くんはぁ、私の大好きな人だもーん」


むにゃむにゃと言う麻子。



「この状況で、シャレになってねぇよ、それ」

「うーん」

「って、寝るなよ。おい、麻子」

「んー……」

「麻子。起きろ。起きなきゃ犯すぞ」

「……ん」


うつらうつらし始める麻子に、榊は「どっちだよ」と、呆れながら呟いた。

榊は小さく肩をすくめ、



「なぁ、麻子。お前マジで俺のこと好きなの?」

「うふふ」

「ったく、馬鹿が」


唇が触れた感触は、麻子にもわかった。

けれど、それはどこか夢の中での出来事のようにも感じた。


夢ならば、言っても許されるはずだ。



「好き」


麻子はぬくもりに包まれているような幸福感の中、意識を手放した。