「すみません、いきなり」
「いいや、別にいいけれども…、何か用があるんじゃないのかなって」
「えっと、その。先輩のアドレス教えてくれませんか」
「アドレス?」
私が聞き返すと、七尾は再び申し訳なさそうな、困った顔をした。
「急で本当、申し訳ないです。話したことない男にアドレス教えるっていうのもあれですよね。本当は宍戸先輩から聞こうかとも思ったんですけど」
一旦途切れた。
続ける。
「直接聞いたほうがいいっていわれて。じゃなくて、理由ですよね。ええっと」
少しだけパニックというか、焦っているというか。
あれこれ言おうとして言えなくて、というもどかしさを感じる。
用事とはアドレスだけであろうか。


