え、と振り返ると青年はちょっとばつの悪そうな顔をした。困った顔といってもいい。
それよりも何故知らない人が私の名前を呼ぶのだろう。
私は彼を知らない。
見かけたことがあるような気もするがいつだったか。
「あの、今時間ありますか」
「時間? ありますけど、何か」
「少し話しませんか」
どうしたものか。
彼のことは記憶にないのだが……。
これといって用事もないし、いいだろうと私は頷いた。
困惑したまま、青年のやや後ろを歩いていくと、学生広場に出る。
そこには椅子と机があって、誰でも座れるようになっている。


