加原の落胆は、自己嫌悪からくるものだった。

「安本刑事が襲撃を受けた。時間は午前一時、場所は……」

そう聞いた瞬間咄嗟に、昨日自分と別れたあとに名波が急いで向かったとして、その時間にその場所に着けるかどうか、という計算をしていたのだ。

そして、そんな考えを自覚した瞬間に(……何考えてんだ俺、)と思ってしまったことも、だった。

そう考えて正解のはずなのだ。
捜査に私情は禁物。

それが警察官の基本であるはずなのに、その瞬間は無意識に、名波を庇ってしまった。

名波が犯人である可能性は十分すぎるほどにある。
なのに、反射的にその可能性を捨てようとしてしまった。

彼女が犯人でなんてあってほしくない、そんな個人的な情があることは、誰にともなく、一目瞭然だった。