常にナイフを持ち歩き、自分の感情を弄ばれたために、自分のプライドを汚されたという、ただそれだけのために、「殺してやる」とまで口走る。

そして挙げ句、別に好きだったわけでもない、どうとも思っていなかったクラスメイトを本当に刺してしまうような、危険な思考を持つ少女。

しかも書店の監視カメラに定期的に映って、アリバイ工作までしている。

そんなヒステリックで卑怯な人物像と、加原が知っている名波は、どうしても噛み合わないのだ。


もしも仮にの話だ。
もし、本当に名波が無実だったのだとしたら。

名波の有罪を作り上げたのは、同級生たちの嘘の証言だ。
名波の五年間を奪い、人生を狂わせたのは、あの五人なのだ。

それをなにかの拍子に、名波本人や、彼女の関係者が知ったとして。


“殺人犯に仕立て上げた”――それは、復讐の動機には、なり得ないだろうか。