泣き顔の白猫


あくる日も加原は、資料室に籠っていた。

何度も何度も読み返した、五年前の事件の調書。
それでもまだ何か得るものがあるんじゃないかと、暇を見つけては、暗記できそうなほど読み込んでいる。


首筋が痛みはじめてやっと、加原は目を閉じた。
普段体を使う仕事ばかりしているだけに、目の疲れは堪える。

一旦休憩しようか、と思っているところへ、物音が聞こえた。

「よう」
「え、ヤスさん」
「加原はどこだって聞いたら、昼からずっとこっちって聞いたんでな。何やってんだ、お前」
「あ、いや……」

缶コーヒーを二本持って、安本が扉を開いたのだった。

「ほら、飲むか?」
「ここ、飲食禁止ですよ」
「じゃあ出てから飲めよ。あ、『りんご』のコーヒーに慣れてちゃ、こんなもん飲めねえか?」
「いえ……ちょうど甘いもの欲しかったんです。ありがとうございます」

差し出されたカフェオレの缶を、礼を言って受け取る。