泣き顔の白猫


『午前一時、二十三歳、館商高校』。
無造作に書かれた三つのキーワードに、もう一つ書き加えられている。

『五年前の殺人事件』。

被害者たちの共通点は、四つになっていた。


こんなことを言っては物騒だが、過去の事件の犯人が狙われるというケースならば、まだわかる。
判決が気に入らなかったとか、反省の色が見えないことに腹が立ったとか、被害者の関係者が復讐のためにだとか。

けれど今回の件は、それとは違うように思えるのだ。

名波は執行猶予のない実刑だったし、全く反省していないように見えるということもなかった。
もちろん、だからといって、遺族や被害者の友人たちの気持ちの整理がつくわけではない。

だが今回の連続殺人で、まず狙われたのは、犯人である名波ではなかったのだ。
それどころか、世間的には犯人検挙に役立つ証言をした、畑野優馬の友人ら五人が、相次いで殺された。


平たく言うならば、“名波が殺されるならまだしも、どうして事件の証人が殺されたのか”、ということだ。


恐らくこれは、畑野優馬の復讐ではない。
名波に不利な証言をした人物が、次々と――そう考えた方が、自然だ。