――…ガラッ


「部長、おかえ…え?」

「部長どうしたんですかっ!?」


部長と矢部先輩の姿を見た2人は目を丸くした。
そして例外が一人…。


「うわー…セクハr」
『事情があるんだよ風香ちゃん』


最後までは言わせなかったが、言いたい事はわかった。

部長を尊敬している風香ちゃんの事だ。
早めに誤解を解かないと、これから矢部先輩に対して毒しか吐かなくなってしまう。

そう思ったので、風香ちゃんだけこっそりさっきあったことを耳打ちした。


「ふーん、なるほどな」

『だから誤解はしないでね』


「わかった。…3年の女子を絞めてくる」

『それもダメーー!(汗)』


安心したのもつかの間だった。
しばらくは風香ちゃんから目が離せないようだ。


「…で、何の用事で来たんだ?」


椅子に座った部長が矢部先輩にそう尋ねた。

まぁ用事はたぶん撮影のことだろうけど。


「うん、実はちょっと頼みたい事があって」

「頼みたいこと?」

「このショートドラマに出て欲しいんだ」



…え。


一瞬この部室の空気が固まったのは私の気のせいではないだろう。


「…私が?」

驚くのも当たり前だろう、今までこんなことはなかったのだから。


「他の演劇部の子じゃダメなの?」

「出来れば、日向さんにやってもらいたいんだ」


部長は目線を矢部先輩から外し、考え込んだ。


「部長、出ないんスか?」

「せっかくだし、出たらどうですか?」

「だって、私演技下手だと思うし。」


自信がないなんて部長らしくないな。


『部長、大丈夫ですよ。放送部全員が大丈夫だって保証します!』

「花耶…よし、わかった。やるよ!!」


いつもの元気に戻った部長。


「…放送部が保証してもなぁ」
「余計な事は言ったらダメだろ~風香」


うん。ダメだよ風香ちゃん。
とか心で突っ込んでいる間に部長は矢部先輩にOKを出した。


撮影は次の土日から。

部長は一体どんな役をやるんだろ?