撮影が始まってから3時間が経った。

ショートドラマの撮影は順調に終わっていて、ここでお昼の休憩となった。


「よーし、皆お疲れさん。今からお昼の休憩に入るから水分ちゃんと取って弁当食べてね」

「「はーい」」


撮影場所が美術室だったため、風香ちゃんとそこから出て屋上へ行く。

屋上に着くと、適当に座る。


『とりあえず、お疲れ様』

「おう、お疲れ」


弁当を取り出し、まだ梅雨のため少しジメッとした空気の中で食べ始める


「それにしてもさ」

『ん?』

「あの“絹川”役の星野さん、矢部先輩に色目使いすぎ」

『まぁ、それはちょっと思ったかな』


でも仕方がないとは思う。
だってあんなに顔がよくて性格もいい先輩が相手なら少なくとも女の子はそんな風な態度にはなるだろう。

「矢部先輩はあんな奴等には目も向かないだろうけど」

『だろうね。…というか、もしかして矢部先輩、部長の事…。』

「部長の事好きならいいけど、ぶっ殺す」

『いいのに殺すの!?』


なんて奴だ。

言っている事がどこか矛盾してるぞ!!


「なんてな、そこまで人の色恋沙汰にとやかく言うつもりはないから」

『そ、そっか…うん。』

「花耶は好きな人いないの?」

『…っ!!ゲホッ、ゴホッ』


突然何を聞いてくるんだ、この子は!!


『い、いるわけないよ!』

「そんだけ反応しといていないか…」


そんな怪しそうな目で見ないで頂きたい。
ホントにいないから。


『私の事より、自分はどうなの?先輩とまだ付き合ってるんでしょ?』

「いや、別れた」


な、なんですとー!!
聞いてないよ、そんなこと!!


「先輩卒業したじゃん?この前のメールでその話して“じゃあ別れようか”って」

『…なんか、ごめん…。』

「いいよ、気にしてないし」


いや、気にするよ。


「それより、撮影が予想以上に進んだから。午後は殆ど撮らないって。」

『そっか』

「…で、夕方になったら部長と矢部先輩のシーンを撮るんだってさ」

『じゃあ、やっと見れるんだ!楽しみっ』

「そうだな。じゃ、さっさと食べ終わって、準備に行くか」

『イエッサー!!』