その夢の始まりは、昼間。


母親の携帯に、知らない番号から電話がかかってきた。



「おかん、携帯鳴ってるよ。」



私が母親に言うと、家事で手の回らない母親は、代わりに出てくれと頼んでくる。


普段なら、登録されていない番号からの着信には間違い電話の可能性もあるため、出ることを躊躇うものだが、そこはそれ、夢の中。


私は素直に母の頼みを聞き入れ、応対した。



「もしもし。」



すると、携帯の向こうから少年の声が聞こえてきた。



『ねぇ○○、なんで死んじゃったの?僕が××××って言ったから死んじゃったの?』

「は?」




〇〇とは姉の名前で、××××の部分は、上手く聞き取れずに何を言っているのか分からなかった。


名乗ることも、こちらの声に答えることもせずに、少年は何故か死んだ姉の名前を呼びながら、つらつらと喋り続けている。


しかし、私はその少年の声に聞き覚えがあった。


知り合いのところの子供で、Hという当時小学3年生の男の子だ。

Hは姉の息子である甥と同じ小学校に通ってる上に、Hの父親と私の父親は、同業の土木作業員で何度も同じ現場で働いていたため、家族ぐるみの付き合いをしていた。

私の母の携帯番号を知っているのも、決して不自然ではない。


相手を声で判断した私は、Hの名を呼びながら話しかける。



「おいH、お前なに言ってんだ?これはバァバ(私の母)の電話だぞ?○○の電話じゃない。つーか、○○は死んだだろ。」



しかし、Hは私の声を無視して、一人でひたすら喋り続けている。

どうにも要領を得ないため、イタズラか何かだと思った私は、そのまま何も言わずに電話を切った。