──ペチャッ
床に散らばるブタ肉と鮭の切り身。
しかし、更なる異変はすぐに訪れた。
──ピクッ…
──ビチビチビチビチッ!!!!
大人しく横たわるブタ肉をよそに、突然切り身が跳ね出したのだ。
もう切り身なのに。
だが、そんな切り身の様子を見ていた私の心は、冷凍室よりも冷え込んでいた。
生きている時よりも活き良く跳ねる切り身に、恐怖よりも何故かイラつきの方が勝った私は、戸棚から父親愛用のガスバーナーを取り出すと、そのまま切り身を炙り始める。
身を焦がされる切り身は、始めのうちこそ、抵抗するかのように激しくのたうち回っていた。
しかし、徐々にその動きは鈍っていき、最後にはピクンッピクンッと何度か痙攣して、そのまま動かなくなった。
こんがりと焼き上がった鮭に満足した私は箸を取り出すと、床に落ちたままなのも構わずに、一口。
「ん、んまい。」
……死してスライスされてもなお、執念で動き跳ね回る切り身よりも、何故か自分の方が恐ろしく感じた、そんな夢でした。
(了)