その夢は確か、夏の真夜中だった。


喉の乾きをおぼえて、私は2階の自室から1階の台所へと降り、豆電球を点けただけの薄暗いなかで冷蔵庫を開けた。


闇に慣れた目に庫内の灯りが眩しく、涼しい空気が胸元を這って落ちていく。


麦茶でも飲んでさっさと寝ようと思いながらボトルに手を伸ばすが、目当てのものを手に取るより前に、私はあることに気付いた。







──カタカタッ






どこからか、音がする。


それは確実に目の前の冷蔵庫から響いていて、手をかけたドアからは微かな振動も感じられる。






──カタカタッ





異変に気付いて数瞬置いたのち、冷蔵庫の冷気とは違うヒヤリとした感覚が心臓から全身へと波紋を拡げた。


ネズミでも入り込んでしまったのだろうか?


それとも、どこか不具合でも起きたのか?



考えている間も、その音は鳴り止まない。






──カタカタッ