「よッ海知。」

言葉にできなかった。
今度は絶望ではなく、言葉では表せない感情が出てきた。

何か言おうとした。
でも、言えなかった。

言う前に、僕の目から冷たいものが零れ落ちた。

「海知ぃ・・・。」
「おぅ。なんでも聞いてやる。俺は、お前の“親友”だからな。」

しばらく僕は、海知に泣きついていた。

泣きながら、自然と今の僕の状況を説明していた。

僕の足にがんがあること。
僕の足を切断しなくちゃいけないこと。
僕はもう二度と走ることはできないということ。

「そっか・・・
もう、お前の走り、見れなくなっちまうのか。」

「うん。ごめん。」
「おいおい、お前が謝ることじゃないだろ。」
「うん、だけど・・・。」
「ダ――――ッもう!」
そう言って、海知は勢いよく椅子から立ち上がった。

「もう、やめやめッ。こんな、辛気臭い話はなしだッ!俺が悲しくなっちまう。」

自然と笑顔がこぼれた。

僕の状況は、決して笑えるはずがないのに。

こんなに笑顔がこぼれるのは多分、海知が親友だから。

海知が来てくれなかったら、今頃僕は、独りの病室で絶望のスパイラルにはまっていたと思う。

海知は、こんなになった僕の事を見捨てない。

海知は、僕の足の事をわかっていても、陸上の話をしてくれる。

海知は、僕の心を立ち直らせてくれている。


それが今、どんなに嬉しいことか・・・

僕は海知の話を大笑して聞きながら、暖かい涙を流していた・・・。