目が覚めると、目の前には真っ白な天井だけが見えた。
―――ここは・・・
そうか、僕は海知と体力測定中に・・・
そして、僕は恐る恐る痛みのある方の足を見てみた。
「ッ!!!」
比べてみると、差は歴然としていた。
痛みのある足は、パンパンに腫れていた。ただ青白い、大根足だ。
コンコンッ。
そんな足を見て硬直していると、病室のドアがノックされた。
「ハイッ」
「・・・海知、気付いたの・・・」
母さんだった。なんだかほっとして、何か冷たいものが僕の頬を滑って行った。
「なぁ、母さん。本当の事、教えて。絶対嘘つかないでッ。」
「・・・えぇ。」
「僕、また走れるようになる??」
僕は母さんに縋り付きながらそんなことを聞いていた。
―――こんな足で、走れるわけがない。
「・・・しっかり聞いて、海知。」
いつになく真剣な眼差しを僕に向けた母さんの口からは、聞きたくない言葉が返ってきた。
「あなたの足には悪性腫瘍があるの。しかも、かなり進行してて、もう取り返しがつかないみたい・・・。だから・・・ッごめんなさい!」
母さんはそこまで言って泣きながら病室を後にした。
―――アクセイシュヨウ?
―――トリカエシガ・・・ツカナイ??
母さんの言ってる事が、しばらく理解できなかった。
これから僕は、どうなるのだろう。
そんな不安が、波のように襲ってきた。一人きりの病室で。
―――こんな気持ちの中、いつもだったら走りに出てるのに・・・
ランニングにすらいけない。
僕は、これから本当にどうなるんだろう。
そして僕は、独りの病室から見える夜の星々を、ただただ呆然と眺めていた。