「―――10秒26・・・。」
部長がタイムを読み上げる。タイムはそこそこで、ボクの持っていたタイムの更新はならなかった。
そして、あたりはざわつき、ただ一人を除いては、目の色が暗くなり始めた。
「はえぇ・・・」
「こんなのに絶対勝てねえよ・・・」
「また地区予選おちかぁ・・・」
そんな声がぽつぽつと聞こえてきたとき、除かれた一人がしゃべりだした。
「うっわー!!さすが!!めっちゃ速ぇな!久しぶりにワクワクしちまったゼ!」
そう。海知だけが特に何も気にした様子がなかった。
「ゼッテェその走り方マスターして、お前よりも早くなってやる!!」
と、いきなり戦線布告までしてきた。僕を特別扱いしない人間に、久しぶりに会ったかも。
「あぁ、待ってるよ。」
そう言って、ボクはこれからの楽しい日々を夢見ていた。
近いうち、その夢を壊すことになるとも知らずに・・・

―――足、まだ疲れ取れてないのかな?今日はしっかり体を休めよう。