それから僕と海知は、一緒に部活見学に行った。
色んな部活があったけど、やっぱり海知も陸上部みたいだ。
「これから、速く走る走り方、教えてくれよ!!」
「うん。一緒に頑張ろう!!」

そして本入部の日。
僕はやっぱり、目立っていた。
「―――あの子、全中三連覇の・・・」
「マスホ・・・カイチだっけ?」
パンパン!!
その時、部長の拍手でその場が静まった。
「そこまで。みんなも見てわかるとおり、今年は大物も入部してくれた。でも、自己紹介してくんないと、本人の事がわかんねぇからな。一年生、自己紹介よろしく。」
「ハイ!!」
そして、それぞれの自己紹介が始まった。
その中には、何度か隣のレーンを走った奴も混じっていた。
そして僕の番。
「増穂 海知です。中学では、短距離専門でした。これからよろしくお願いします。」
そして、先輩たちからの拍手。
「有り難う。ところで、増穂。お前、100メートルと200メートル、どっちが得意だ?」
「あ、100です。」
「じゃあ、走ってみてくれないか?全力じゃなくていいから。」
「えっ!?こ・ココでですか?」
「あぁ。嫌ならいいが・・・」
「あ・いえ、やります。でも、ちょっとアップしてからでも良いですか?いきなり走って怪我したくないので・・・」
「あぁ、調度良いからみんなでアップしよう。メニューは・・・大久保、頼む。」
「はい。じゃあまず、二人一組で、ストレッチやります・・・」

この日のアップメニューは、ストレッチ、200メートルトラックを軽くジョグ。ほんとに簡単だ。
「じゃあ、増穂。走れるか?」
「はい。大丈夫です。」
そして、今からは僕の時間。僕が、自分でこの地に風を作り出すトキ。
「on your make―――・・・」
「leady・・・Go!!」
この掛け声とともに、僕はスタートを切る。
まずは序盤。体を起こしながら手を思い切り振る。全身で風を作る準備をする。
中盤。体が良い状態まで起き上がると、一気に風を作っていく。この感覚が一番好きだ。風を作り、このフィールドを、僕だけのものにする。誰にも渡さない、譲らない。僕だけのフィールド。
終盤。そのフィールドを保ちつつ、ゴールへと一直線に進む。自分が大砲の弾にでもなったかのように、そのままのスピードでテープを切る。