4月8日、午前9時―――・・・
僕、増穂 海知は、高校デビューを果たそうとしていた。

高校とは、中坊の頃の僕にとってはキラキラと輝いていて、あこがれの存在だった。
ただ、今、入学式の校長先生の話を聞いている限りでは、中学とたいして差はないようだ。
「校長先生の話、長くねェ??」
いきなり、隣の席の奴が話しかけてきた。
「うん、長いよね。そろそろ眠くなってきた。」
「あぁ、確かに。ところで、お前、増穂 海知・・・であってる??」
「・・・何で僕の名前を??」
それを聞いたとたん、入学式が終わってしまった。

―――結局、アイツの名前、聞けなっかったなぁ。
そう思いながら、僕は自分のクラスに向かう。
ココは、それなりの進学校で、頭はそこそこ。ただ僕の場合、進学目当てで入ったわけではないので、勉強についていけるか、物凄く心配だ。

「おっ。また会ったな。」
「あ。どうも。」
さっき、入学式で隣だった奴だ・・・。
名前を知ってる理由を聞いてみようか・・・。
「あのさ―――」
「俺さ―――中学時代、陸上やってて。でも結局は県大会どまりだったんだけど・・・。それでも全国大会は毎年のように律儀に見に行く学校でさ。よく、自分の県の代表のやつを探したわけよ。そしたらさ・・・、お前だったワケ。」
・・・それは。
ちょっとありがたい。
「そ・そうだったんだ。」
そう。僕は小さい頃から足が速かった。
小学校の頃は、学校一足が速くて、それを生かして中学は陸上部に入った。
そしたらそれも大成功で、見事全中三連覇を成し遂げた。そして、陸上部の強いこの学校に特待生として入学し、現在に至る。
「・・・しかも俺、目の前にいる全中三連覇のお前と、名前が一緒っていうね。そのおかげで、よくからかわれたよぉ・・・。”あっちの海知は最強なのに、何でこっちの海知は弱いんだ”ってね。」
「・・・は?」
「・・・俺、小宮海知ってんだ。これからよろしくな。」
「・・・増穂海知です。三年間、よろしくね。」

これが、親友、海知との出会い。
この出会いとともに、僕は、望まないモノとも出会っていた。

―――昨日、走りこみやり過ぎたかな?筋肉痛がとれてない・・・