海さんは苛々と受話器をおくと、昨夜のまま放りだしてあったバッグをひっつかむと玄関へ走った。
あたしはただひとりで残されるのが怖くて怖くて、海さんの後について部屋を出た。
よく考えてみると、この部屋に来てから外へ出るのははじめてだった。
まるでタブーであるかのように、あたしは自分に外界とかかわることを禁じていた。
ちょっとしたショック状態。
降りてゆくエレベーターの中、夢から醒めて現実へと戻る過程みたいに保たれていたバランスが崩れてゆく。
大通りまで出るとすぐにタクシーはつかまった。
運転手は秋も深まったこの時期に上着なしの薄着のふたりを怪訝そうに見たが、海さんが行き先を告げると車は順調に走り出した。
「どうして、どうして気づいてあげれなかったんだ、昨日優香子はおかしかったのに。同じことを繰り返して、また間違ってしまった。ばかだ、本当のばかだ」
車内で海さんは怖い顔のまま呟きつづけ、声をかけることを許さない雰囲気を醸していた。
実はあたし自身にもそんな余裕はなかった。
思わず出てきてしまったものの、ずっとぬるま湯の中にいた者に外界の刺激はつよすぎてショック状態からまだ立ち直れずにいた。
あたしはただひとりで残されるのが怖くて怖くて、海さんの後について部屋を出た。
よく考えてみると、この部屋に来てから外へ出るのははじめてだった。
まるでタブーであるかのように、あたしは自分に外界とかかわることを禁じていた。
ちょっとしたショック状態。
降りてゆくエレベーターの中、夢から醒めて現実へと戻る過程みたいに保たれていたバランスが崩れてゆく。
大通りまで出るとすぐにタクシーはつかまった。
運転手は秋も深まったこの時期に上着なしの薄着のふたりを怪訝そうに見たが、海さんが行き先を告げると車は順調に走り出した。
「どうして、どうして気づいてあげれなかったんだ、昨日優香子はおかしかったのに。同じことを繰り返して、また間違ってしまった。ばかだ、本当のばかだ」
車内で海さんは怖い顔のまま呟きつづけ、声をかけることを許さない雰囲気を醸していた。
実はあたし自身にもそんな余裕はなかった。
思わず出てきてしまったものの、ずっとぬるま湯の中にいた者に外界の刺激はつよすぎてショック状態からまだ立ち直れずにいた。
