あたしはちょっとした冒険家みたいな気分で部屋を探検してみることにした。
フローリングの床は隅々まで几帳面に掃除されて埃ひとつない。
女の人の住まいにしては圧倒的にものが少ないせいか、どこも割合ゆったりとしているが物寂しさは否めない。
快適だが、諦めにも似た静けさが浸透している。
ピカピカに磨き上げられたキッチンまで来て、はじめてお腹が悲鳴をあげているのに気づいた。
誘う、匂い。
ダイニングテーブルに置かれたちいさな土鍋の蓋を開けると、今作ったばかりというように湯気が立ち上り、卵粥がやさしく懐かしい匂いを放出していた。
