愛のかたまり

 揺り起こされて目覚めると、目の前には海さんの心配そうな顔。

 ひどく頭が痛んで呻く。

「どうしたの、怖い夢でもみた? 大丈夫、ここにいるわ」海さんはリズムをとるようにあたしの背中をたたく。

 いつもならそれだけですぐに安心がやってくるのに、今は不吉な予感がぞわぞわと背中を走って震えが止まらない。

 あたしは息も絶え絶えで、頭の中もめちゃくちゃで、途切れ途切れに話した。

「海さん! 海さんどうしよう・・・・・・夢の中で、ちっちゃい女の子が、あの人に、優香子さんにそっくりの、泣いてて、たすけてって、何回もたすけてって、もしかして」

 顔をこわばらせた海さんは電話にかけよると、素早くいくつかの数字を押した。

 コール音が途切れるとすぐに勢い込んで話した。

「・・・・・・ああ、おとうさん、僕です。海人です。優香子を、優香子をお願いできますか、緊急なんです・・・・・・ええっ、なんですって? ・・・・・・本当に? 嘘じゃ・・・・・・じゃぁ、本当に優香子はそちらに帰ってないんですね? ・・・・・・わかりました。すみません」

 受話器の向こうではまだ誰かが喋っているようだったが、海さんは強引に切ってまたボタンを押した。

 今度はいつまでもコール音が続く。