愛のかたまり

「結婚して、すぐに子どもが生まれて、はじめて幸せというものの感触を知った気がしていた。それまで家族というものにはまるで縁がなかったから。

　だから、必死で働いた。いいところに住んで、おいしいもの食べさせて、綺麗な服着せて･･････だけどそれは間違いだった。忙しすぎていつのまにか見失っていた。

　優香子が淋しくて心細くて少しずつ壊れていったのに全然気づかないでいた。やっとできた家族をどうやって抱きしめればいいのかわからなかった。簡単なことなのに。

　そうして･･････娘が死んだ」

　重すぎる言葉が吐き出され、海さんは目を伏せ長い睫が震えた。

　あたしは身体の震えを抑えるために、歯を食いしばったり両手をつよく握り直したりしなければならなかった。