愛のかたまり

「うん、ほんとに怖かった。けど、あの人、海さんをすごく好きなことは本当だね」あたしは言った。

 海さんはあたしの顔をまじまじと見た後、それはないわと微笑んだ。

 だって。

 だってわかるよ。好きの気持ち。泣きたいぐらい、好きの気持ち。

「話してくれないの」

 出てきた言葉はそれだけだった。

 聞いたからって海さんを救う言葉なんてたぶんなく、元気づけることも慰めることさえできないかもしれない。

 どうすることもできないのは子どもだってわかるけど、かと言って知らないふりではいられなかった。

「だって、あたしの家族だもん。世界にひとりの家族だもん」

 勝手に流れる涙、なんてそんなもん放っといて、言葉がうまく出ない分だけ心を渡そうと思った。

 海さんはしばらく目を潤ませてあたしを見つめていたけれど、静かに話しはじめた。